16. ターゲットの決め方:YDNフレームワークで「売れる相手」を見極める

16. ターゲットの決め方:YDNフレームワークで「売れる相手」を見極める

この記事の3行まとめ

  1. ターゲットはYDN(Y:やりたいこと、D:出来ること、N:ニーズ)の3つの円が重なる部分にいる。
  2. 事業における最大のリスクは資金不足でも競合でもなく、「事業者がやる気を失うこと」である。
  3. ターゲットを決めたら、相手の弱みと自分の強みをすり合わせることで具体的な事業が立ち上がる。

こんにちは。

前回は「利益と粗利」について解説しました。売上の大きさではなく、手元に残る利益が大事だという話でしたね。

利益構造が理解できたら、次に考えるべきことがあります。

「そもそも、誰に売るのか」です。

フリーランスや副業で「なんとなく」仕事を受けている人は多い。来た仕事を片っ端からこなす。それでもしばらくは食べていけるかもしれない。でも、いつかこう思う日が来ます。

「あれ、自分って何のためにこの仕事やってるんだっけ。」

今回は、そうならないためのターゲットの決め方を解説します。使うのはYDNというフレームワークです。

1. ターゲットを決める「YDN」フレームワーク

事業を始めるにあたって必要な要素は3つあります。

  • Y:やりたいこと — 自分がその事業をやりたいか
  • D:出来ること — 自分にその能力はあるか
  • N:ニーズ — 市場にニーズがあるか

この3つをベン図で描いてみてください。3つの円が重なった部分。そこにいる人があなたのターゲットです。

YDNフレームワーク 3つの円の共通部分 = あなたのターゲット ここを 狙う! Y やりたいこと 情熱・モチベーション D 出来ること スキル・経験・強み N ニーズ 市場の需要・顧客の悩み

逆に言えば、3つの円が重ならない事業は成立しません。なぜか。

  • やりたくなければ、継続できない
  • 出来なければ、始められない
  • ニーズがなければ、売れない

シンプルな話です。でもこの3つのうち、どれか1つでも欠けた状態で事業を始める人が後を絶たない。

「需要があるから」という理由だけで好きでもない仕事を始めて疲弊する人。「やりたいから」という情熱だけで市場調査をせずに突っ込む人。「出来ること」だけを基準にして、やりたくもない仕事で心をすり減らす人。

3つ全て揃わなければ、事業は長続きしません。

2. なぜ「やりたいこと(Y)」が最も重要なのか

YDNの3要素の中で、僕が最も重要だと考えているのは「Y:やりたいこと」です。

ここで一つ質問です。

事業、ビジネスにおける最大のリスクとは何でしょうか?

資金ショート? 競合の出現? 市場の変化?

違います。

事業者がやる気を失うこと。

これが最大のリスクです。

キャッシュフローの問題、商品開発の壁、集客の伸び悩み——ビジネスにおける困難はいくらでもあります。でも、事業者が「やりたい」と思っている限り、何度でもチャレンジできる。資金が尽きても稼ぎ方を変えればいい。商品がダメなら作り直せばいい。集客できないなら方法を学べばいい。

しかし、事業者がやる気を失えば、その他の全ての条件が揃っていてもビジネスは終わりです。お金があっても、良い商品があっても、顧客がいても、やる気のない事業者にはどうすることもできない。

セカヤサ
セカヤサ
僕自身、「稼げるから」という理由だけで始めた仕事が長続きしなかった経験があります。スキル的には出来るし、需要もある。でも心が動かない仕事は、半年もすると手が止まるんですよね。結局やめました。やる気を失うって、本当に全てを止める力があるんです。

だからこそ、ターゲットを決める出発点は「やりたいかどうか」であるべきです。「稼げそうだから」ではなく「この人たちの役に立ちたいか?」で考える。その上で、「出来るか」と「ニーズがあるか」を検証する。この順番が大事です。

3. 3つの円を広げるという発想

「でもYDNが全部重なるような都合のいい事業なんて見つからない」と思った方もいると思います。

その気持ちはわかります。でも、ここで考え方を変えてほしい。

3つの円は今のサイズのまま固定されているわけではありません。円を広げることができるんです。

  • Yの円(やりたいこと)を広げる:新しい分野に触れる、人と会う、体験を増やす。やりたいことは「知らなかったから」見つかっていないだけかもしれない
  • Dの円(出来ること)を広げる:スキルを学ぶ、資格を取る、実績を積む。出来ることは努力で増やせる
  • Nの円(ニーズ)を広げる:市場をリサーチする、顧客の声を聞く、世の中の不便を観察する。ニーズは「気づく」ことで見えてくる

人生の時間の使い方として、この3つの円を広げるための活動は何かを理解し、意識的にその行動を行う。これが長期的に強いフリーランスになるための戦略です。

第1回の「経営とは」で経営者の仕事を定義しましたが、この円を広げる活動こそまさに経営の一部です。日々の作業に追われるだけでなく、自分の可能性を広げる時間を確保してください。

4. ターゲットを決めた後のステップ:強み・弱み分析

YDNでターゲットの方向性が見えたら、次は具体的な事業の形にしていきます。ここで使うのが「強み・弱み分析」です。

ここでいう「強み・弱み」は少し独特です。一般的なSWOT分析のように自社だけを見るのではなく、自分の「強み」と相手(ターゲット)の「弱み」をセットで考えます。この2つが噛み合えば取引が成立する。エキスパート理論の応用です。

手順は4ステップ。

  1. ターゲットを決める(YDNで絞る)
  2. 彼らの「弱み」を分析する(何に困っているか)
  3. 自分の「強み」を分析する(何が得意か)
  4. 両者をすり合わせた解決策を提示する

具体例:新しい学習塾を展開する場合

この手順を具体例で見てみましょう。

  1. ターゲットを決める → 理系の高校生
  2. 彼らの「弱み」を分析する → 国語、英語が苦手(理系科目は自力で伸ばせるが文系科目に苦戦)
  3. 自分の「強み」を分析する → 文章作成が得意、英語もそこそこできる
  4. 両者をすり合わせた解決策を提示する「理系学生向け小論文対策予備校」を開設
ステップ内容学習塾の例
1. ターゲットを決める誰を狙うか理系の高校生
2. 弱みを分析するターゲットの課題国語・英語が苦手
3. 強みを分析する自分の能力文章作成が得意、英語もそこそこ
4. 解決策を提示するマッチング結果理系学生向け小論文対策予備校

注目してほしいのは、この事業を始めるのに「全科目を教えられるスーパー講師」である必要はないということ。数学や物理が教えられなくても、国語と英語が苦手な理系学生にとっては十分に価値がある。

ビジネスを始めるのに、自分がスーパーマンである必要はありません。

今の自分でも誰かの役に立てることはないか。それを探すのが、この強み・弱み分析の本質です。エキスパート理論で学んだ通り、ターゲットより「少しだけ上」なら、あなたには十分に価値があります。

セカヤサ
セカヤサ
もう一つ補足すると、「自分だけの強みでは足りない」と感じたら、他人と組むという発想もあります。自分は営業が得意、相手は技術が得意。組み合わせれば一人では届かない顧客に届けられる。ターゲットに合わせてチームを設計する、というのも立派な経営判断です。

5. YDNをフリーランスの実務に落とし込む

ここまでの内容を、実際のフリーランスの仕事に当てはめてみましょう。

例1:Webデザイナーの場合

  • Y(やりたいこと):飲食店のブランディングに関わりたい
  • D(出来ること):WordPress制作、ロゴデザイン、写真撮影
  • N(ニーズ):個人飲食店はWeb集客に困っているが、大手制作会社に頼む予算がない

→ ターゲット:開業3年以内の個人飲食店オーナー

→ 強み・弱み分析:彼らの弱みは「Web集客の知識がない・予算が少ない」。自分の強みは「低コストでWeb制作ができる・飲食業界への関心が高い」。解決策として「個人飲食店専門・月額制Web集客パッケージ」を提供する。

例2:ライターの場合

  • Y(やりたいこと):テクノロジー系の記事を書きたい
  • D(出来ること):SEOライティング、元エンジニアとしての技術的知見
  • N(ニーズ):SaaS企業はオウンドメディアのコンテンツを量産したいが、技術がわかるライターが少ない

→ ターゲット:BtoB SaaS企業のマーケティング担当者

→ 強み・弱み分析:彼らの弱みは「技術的に正確なコンテンツを書けるライターが見つからない」。自分の強みは「エンジニア経験+ライティングスキル」。解決策として「元エンジニアが書くSaaS企業向け技術コンテンツ制作」を打ち出す。

どちらの例でも、ベネフィットはターゲットがいて初めて成立しています。「誰に」が決まるから「何を」が決まる。逆に「誰に」が曖昧なまま商品を作ると、誰にも刺さらない中途半端なものになりがちです。

また、USPもターゲットが明確になって初めて設計できます。「個人飲食店専門」「元エンジニア」——これらはターゲットに向けたUSPです。ターゲットなきUSPは、ただの自己紹介でしかありません。

6. ターゲットを決めることで見える世界

ターゲットが明確になると、事業のあらゆる要素がクリアになります。

  • 何を売るか:ターゲットの弱みから商品が決まる
  • いくらで売るか:ターゲットの予算感から価格帯が決まる
  • どこで売るか:ターゲットがいる場所(SNS、コミュニティ、検索エンジン)が決まる
  • どう伝えるか:ターゲットに響く言葉遣いが決まる

「なんでもやります」のフリーランスと、「〇〇専門です」のフリーランス。どちらに頼みたいか。答えは明白です。マーケットインの発想で考えれば、まず市場のニーズがあり、そこに自分のスキルを合わせていく。ターゲットを決めることは、その第一歩なのです。

さらに言えば、ポートフォリオ戦略もターゲットが決まって初めて機能します。同じターゲットに対して複数の商品を展開するのか、異なるターゲットに分散するのか。ターゲットなしにポートフォリオは組めません。

7. アクションプラン

今日からYDNを使ってターゲットを考えてみましょう。

  1. 紙に3つの円を描く:Y(やりたいこと)、D(出来ること)、N(ニーズ)の円をベン図で描き、それぞれに該当する要素を書き出す。
  2. 重なりを探す:3つが重なる部分に「誰がいるか」を考える。それがあなたのターゲット候補。
  3. 強み・弱み分析をやってみる:ターゲットの「弱み(困りごと)」と自分の「強み(得意なこと)」をそれぞれリストアップし、すり合わせて解決策を1つ書く。
  4. Yの円を広げる計画を立てる:今月中に「まだ試していないこと」を1つ体験してみる。興味の幅を広げる活動を意識的に入れる。

8. まとめ

というわけで、ターゲットの決め方について解説しました。

  • ターゲットはYDN(Y:やりたいこと、D:出来ること、N:ニーズ)の3つが重なる部分にいる
  • 3つの中で最も重要なのは「Y:やりたいこと」。事業における最大のリスクは「事業者がやる気を失うこと」である
  • 3つの円は広げることができる。人生の時間の使い方として、円を広げる活動を意識的に行おう
  • ターゲットが決まったら強み・弱み分析で事業を具体化する。自分がスーパーマンである必要はない
  • ターゲットが明確になれば、商品も価格も発信方法も自然と決まる

ターゲットが決まると、次に気になるのは「どうやって売るか」です。次回は、ビジネスの成否を分ける「3M(マーケット・メッセージ・メディア)」について解説します。売る相手が決まったら、次は届け方です。

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