この記事の3行まとめ
- 売上を「気合い」で上げるのは不可能。「売上 = 客数 × 単価 × 頻度」に分解して考える。
- それぞれの要素を少しずつ改善するだけで、掛け算の効果で売上は大きく伸びる。
- 「値付け」に遠慮は無用。「売れないかも」という思い込みを捨て、まずは価格をつけて市場に問うことが重要。
1. 導入:なぜ「売上を上げろ!」と号令しても上がらないのか
「今月はもっと頑張って売上を上げよう!」
そんな号令をかけたところで、売上が上がることはありません。なぜなら「売上」とは結果であって、直接コントロールすることができない指標だからです。
体重計に乗って「痩せろ!」と念じても痩せないのと同じで、コントロールすべきは「食事(摂取カロリー)」や「運動(消費カロリー)」という構成要素の方です。
経営者にとって必要なのは、精神論ではなく分解思考です。
売上をコントロール可能な「要素」にまで分解し、どこがボトルネックになっているかを数字で把握する技術。それが「売上の方程式」です。
2. 売上の基本公式(ジェイ・エイブラハムの3原則)
世界的なマーケティングコンサルタント、ジェイ・エイブラハムは、売上を以下の3つの要素に分解しました。
売上 = 客数 × 客単価 × 購入頻度(リピート率)
この公式が強力なのは、「どれか1つを劇的に上げる必要はない」という点です。
例えば、3つの要素をそれぞれ1.3倍(30%アップ)にするだけで、売上は2.2倍になります(1.3 × 1.3 × 1.3 = 2.197)。

「客数を2倍にする」のは至難の業ですが、「単価を少し上げ、リピートを少し増やし、新規客を少し増やす」なら現実的に可能です。
参考書籍:『ハイパワー・マーケティング』ジェイ・エイブラハム著
3. 【理解編】ケーススタディ:ラーメン屋の売上倍増計画
まずはシンプルな例で、この方程式の使い方を理解しましょう。
現状の数字
あるラーメン屋の年商が約2,000万円だとします。
- 客数: 80人/日
- 単価: 700円
- 頻度: 年1回(※簡略化のため)
年商 = 80人 × 365日 × 700円 × 1回 = 20,440,000円
目標:年商4,000万円(2倍)にするには?
この時、どの変数をいじるかで戦略が変わります。
- 単価を2倍にする(700円 → 1,400円)
- リスク:客数が激減する可能性が高い。高級路線への転換が必要。
- 頻度を2倍にする(年1回 → 年2回)
- リスク:胃袋には限界がある。味が飽きられる可能性も。
- 客数を2倍にする(80人 → 160人)
- 可能性:席数に余裕があるなら、広告や看板の改善で狙えるかもしれない。
この店の場合、「客数」が一番の伸び代(ボトルネック)かもしれません。しかし、もし席が満席なら「単価」か「回転率(頻度)」を上げるしかありません。
このように、自社の状況に合わせて「一番楽に上げられる変数はどれか?」を見極めるのが経営者の仕事です。
次に、より現実的なフリーランス(Web制作、デザイン、ライター等)の例で考えてみましょう。多くの人が陥る「自転車操業」のモデルです。
Before:自転車操業モデル(フロー型)
- 客数: 新規3件/月
- 単価: 5万円(LP制作など)
- 頻度: 1回(作って終わり)
月商 = 3件 × 5万円 × 1回 = 15万円
これでは生活がギリギリです。売上を倍にするために「客数を倍(月6件)」にしようとすれば、制作と営業で忙殺され、品質が落ち、いずれ破綻します。
ここで変えるべきは「客数」ではなく、「単価」と「頻度」です。
After:ストック型モデルへの転換
- 単価アップ: 「自信がないから」と安売りするのをやめ、強気の価格設定にする。
- 頻度アップ: 「保守契約」や「更新代行」をセットにして、毎月課金(サブスク)モデルを作る。
改善後の売上イメージ:
- ストック収入: 月額保守 1万円 × 既存20社 = 20万円(毎月自動で入る)
- フロー収入: 新規高単価 15万円 × 月1件 = 15万円(厳選して受注)
- 合計月商 = 35万円
労働時間は減っているのに、売上は2倍以上になりました。これが「方程式」を使った経営です。
5. アクションプラン:3つの変数を上げる具体策
① 単価を上げる(難易度:中)
ここがフリーランスにとって最大の心理的ハードルですが、最も効果が高いです。
- 「値付け恐怖症」を克服する
「こんな値段で売れるわけがない」「誰が買うんだ」という自分の思い込みを捨ててください。まずは「テスト」として値札をつけて市場に出してみることです。意外とあっさり売れることは多々あります。 - 情報の非対称性を理解する
顧客はプロであるあなたほど相場を知りません。むしろ、安すぎる価格は「品質は大丈夫か?」という不安を与えます(安かろう悪かろう)。 - 松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)とアンカリング効果
5万円のプラン1つだと「高いか安いか」で判断されますが、15万・10万・5万と並べると、真ん中の10万が選ばれやすくなります。高い価格(アンカー)を最初に見せることで、心理的な基準を作るテクニックです。
※もちろん、知識格差を悪用して不当に高い請求をするのはNGです。信頼を失えばLTV(生涯価値、詳しくはこちらの記事)が消滅します。あくまで「適正な価値」を堂々と請求しましょう。

② 頻度(リピート)を上げる(難易度:低)
新規集客のコストは、既存客維持の5倍かかると言われています(1:5の法則)。したがってリピート顧客を生み出す施策で効率よく売り上げUPをしていきましょう。
- サブスクリプション化:保守、顧問契約、オンラインサロン。
- ニュースレター/LINE:忘れられないように定期的に接触する(ザイオンス効果、単純接触効果とも)。
- メンテナンス提案:「そろそろ更新時期ではありませんか?」とこちらから提案する。
③ 客数を増やす(難易度:高)
最も難しく、コストがかかるのがここです。とはいえ初めは顧客が0なのでまずはここで一定の顧客を獲得しなければなりません。
- 営業活動:交流会、テレアポ、問い合わせフォーム営業など。待っているだけで仕事が来ることは稀。自分から接点を作りに行く。
- 紹介制度:満足度の高い既存客からの紹介が最強の集客経路。
- SNS/ブログ発信:信頼貯金を貯める。
- 広告運用:LTVが見えているなら、広告費をかけても回収できます。
ある程度顧客がいる状態なら、まずは① 、②を先に着手するのがおすすめです。
6. まとめ
売上が上がらないと嘆く前に、まずは自分のビジネスを分解してください。
- 客数・単価・頻度の今の数字を書き出す。
- 「客数」ばかり追いかけて消耗していないか確認する。
- 勇気を出して「単価」を上げるか、仕組みを変えて「頻度」を上げられないか考える。
勘と根性ではなく、「数字」で経営しましょう。
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