この記事の3行まとめ
- 売上を上げるために「新規客」ばかり追いかけるのは非効率。「客単価」を上げる方がはるかに簡単で利益率が高い。
- アップセル(より高いものを)とクロスセル(セットで)は、顧客満足度を高めながらLTVを最大化する必須テクニック。
- 提案のタイミングは「購入決断の直後」がベスト。「ご一緒にポテトはいかがですか?」は魔法の言葉。
1. 導入:売上が伸び悩む本当の理由
「もっと売上を上げたい!」と思ったとき、多くの人は「もっとたくさん客を集めなきゃ」と考えます。
しかし、新規顧客の獲得コスト(CPA:Cost Per Action/Acquisition)は既存顧客への販促コストの5倍もかかると言われています(1:5の法則)。
賢い経営者がまず着手するのは、集客ではなく「客単価のアップ」です。
目の前にいる顧客に、あと1品、あるいはあと少し良い商品を手に取ってもらう。これだけで広告費をかけずに利益を劇的に増やすことができます。
そのための具体的な手法が「アップセル」と「クロスセル」です。
2. アップセルとクロスセルの意味と違い
言葉は似ていますが、その意味と顧客へのアプローチ方法は明確に異なります。以下の表で違いを整理しましょう。
| 項目 | アップセル(Up Sell) | クロスセル(Cross Sell) |
|---|---|---|
| 意味 | 検討中の商品より上位の商品を提案する | 検討中の商品と関連する商品を提案する |
| イメージ | 「グレードアップしませんか?」 | 「ご一緒にいかがですか?」 |
| 目的 | 単価そのものを引き上げる | 買上点数を増やす |
| 例(航空券) | エコノミー → ビジネスクラス | 航空券 + ホテル・レンタカー予約 |
3. アップセル・クロスセルの身近な具体的事例(牛丼屋・Amazon)
私たちの日常は、この2つの戦略で溢れています。牛丼チェーン「松屋」の券売機を想像してみてください。
アップセルの例
あなたが「牛めし(並盛)400円」のボタンを押そうとしたとき、画面には何が表示されるでしょうか?
「お得なセット」や「大盛への変更」が魅力的な写真と共に表示されます。
- 並盛(400円) → 大盛(550円)
- これがアップセルです。「お腹が空いているなら、少し足して満足感を高めませんか?」という提案です。
クロスセルの例
注文確定画面に進む前、必ずこう聞かれます。
「ご一緒に生卵やサラダはいかがですか?」
- 牛めし(400円) + 生卵(80円) + サラダ(120円)
- これがクロスセルです。メイン商品(牛丼)をより美味しく、健康的に楽しむための関連商品の提案です。
もし400円の牛丼だけを売っていたら、売上は400円です。
しかし、大盛にして(+150円)、セットをつければ(+200円)、客単価は750円になります。
客数は同じ1人でも、売上は約2倍になるのです。

4. なぜ「セット販売」は嫌がられないのか?
「高いものを売りつけたら嫌われるのでは?」と心配する人がいます。
しかし、適切なタイミングでの提案は、むしろ「親切」として受け取られます。
- マクドナルド: 「ご一緒にポテトはいかがですか?」と言われて怒る人はいません。「あ、そういえば食べたいな」と気づかせてくれるサービスとも言えます。
- Amazon: 「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というレコメンドは、買い忘れ防止や新しい発見につながります。
重要なのは、「顧客のメリット(より良い体験)」を提示することです。
ただの押し売りではなく、「これを合わせるともっと便利ですよ」「こちらの方が長持ちして結果的にお得ですよ」という専門家としての提案であれば、顧客は喜んで財布を開きます。
参考リンク:アップセル・クロスセルとは?違いや成功させるコツを事例を交えて解説(朝日新聞)
5. アクションプラン
あなたのビジネスに「単価アップ」の仕組みを組み込みましょう。
- 商品ラインナップを見直す(松竹梅を作る):
- 商品が1つしかないとアップセルできません。標準プラン(竹)に加え、上位プラン(松)を用意しましょう。
- 関連商品を用意する:
- メイン商品を買った人が「次に欲しくなるもの」は何ですか?(例:革靴を売るなら靴磨きクリーム、Web制作ならサーバー保守)
- 提案のタイミングを決める:
- 最も成約率が高いのは「購入を決断した直後(財布の紐が緩んだ瞬間)」です。決済画面や契約書へのサインの直前に、さりげなく提案するトークスクリプトを用意しましょう。
6. まとめ
- 新規集客よりも、既存客の「単価アップ」の方が効率よく利益を上げやすい。
- アップセル(上位版)とクロスセル(セット版)を意図的に設計する。
- 提案は「押し売り」ではなく、顧客体験を向上させる「親切な案内」である。
単価を上げて利益を確保したら、次はその利益をどう安定させるかが課題になります。次回は、ビジネスの安定性を左右する2つの収益モデル「インカムゲイン・キャピタルゲイン」について解説します。
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